《本コラムには映画の結末やストーリーに関する記述があります。》

さて第六回は戦争ものです。この映画ははじめあんまし食指が伸びないというか、いまひとつ魅力を感じてなかったんです。あの「ロボコップ」などでお馴染みのポールヴァーホーヴェンがナチスを扱うということで、まあなんかちょっとエログロでお下品なアクション映画かも?と不安はあったし(ロボコップは実はSF映画としては非常に良くできているのですが)。とはいえ、あまり実感として伝わってこない第二次大戦のヨーロッパ戦線、とくにナチスとユダヤ人の問題を描く映画は数多くあれど「オランダを舞台にした抵抗運動」のお話というのはあまり知る機会もないので、と重い腰を上げて観にいったというのが正直なところでした。ところが見終わった感想としてはなんというか、よくもまあここまでやったなというのか、内容自体も踏み込んでいるし、エンタメとしてもじゅうぶん作り込まれている。役者の演技も良かったので、これは意外な秀作、と思ったのでした。

舞台は第二次大戦中のオランダ。ナチスドイツの占領下で迫害を受けるオランダ国民とそこに住む多くのユダヤ人。そのひとりである若きユダヤ人女性歌手ラヘル(カリス・ファン・ハウテン)の波乱に富んだ人生を描いた戦争活劇、ということなのだけど、実はどうもひと筋縄では行かない映画というか、エンターテインメントな仕立てではあるものの、かなり政治的で「オランダ人にとって」の「人種と国家」の問題を考え、若い人に問いかけるのが狙いなんじゃないか。

というのもこの映画「裏切り」というキャッチコピーにもあるとおり、さまざまな人がさまざまな側に立って、裏切り・裏切られを繰り返し、いったい誰が本当の敵で誰が味方なのか最後までわからないという仕掛けになっているのですね。ナチスはどこまでも悪で、オランダ人は被害者で、レジスタンスは英雄で、ユダヤ人は可哀想な民族、みたいないわゆる物語的「クリシェ」をことごとく「裏切る」かたちで展開されるので、「ほう!」とか「へえ!」とか「ありゃ?」とかが後半になってもどんどん続きます。「どーせあーでしょ?ほらやっぱり」みたいな歴史物ではなく、かなり問題提起に近い視点を提示しているところに「この人マジだわ」という強い意志を感じますし、しかもこのへん描き方が、ある意味でかなり踏み込んでいるというか、勇気あるなと思ったのは、ユダヤ人やレジスタンスの側にも裏切り者がいる、という描き方をしていることですね。それから逆にナチス将校に感情移入させるような物語になっていること。この視点は絶対ハリウッドでは無理だわな、と思いました。

このあたり、オランダ人監督ポール・ヴァーホーヴェンが「もうハリウッドはいやじゃ!」とばかりにオランダに戻り、オランダ人キャスト、オランダ人スタッフによる、オランダ映画を作ったということに、実は大きな意味があるんではないかと思うのです。そのあたり、またくわしく語りたいと思います。
では、また、あした。