Vol.01 I'm Just a Jumpin' Jack Boy?
ねえそのままイかせて 『週刊少年ジャンプ』
物心付いてからというもの、読者の端くれとしてのんべんだらりと漫画を読み続けてきた私であるが、読み手として最も漫画に情熱を注いだ時期はいつだっただろう?と考えると、それはおそらく小〜中学生の頃だったように思う。
それは週刊少年ジャンプが部数でも他紙を差し置いて独走状態に入った1980年半ば〜1990年辺り。「DRAGON BALL」「聖闘士星矢」「魁!!男塾」などの名物漫画が目白押しで発行部数も400万部から500万部、さらには600万部へとうなぎ上りしていた時代である。
もちろん、例に漏れず当時の私もドップリその世界にはまっていた。
一分一秒でも先に読みたいがため、兄弟のいる家庭では一家に二冊あった…、な〜んて半ば冗談のような伝説が残っているが、余裕で実話だろう。うちで実際そうだったというわけではないのだが、そんなジャンキースレスレの気持ちを当時の少年だった私はとても理解できるのだ。
ある日のことである。
私の住んでいた地域はジャンプの発売は毎週月曜日であったが、隠れて日曜日に売り出している店があることを友人から教えてもらった。それは本屋ではなく、駄菓子や文房具の延長で雑誌を置いているようななんとも寂れた雑貨店であったが、売ってくれるのならなんだって構やしない。早速私は嬉々として一日早くに店を訪れた。
しかしながら、その店はなんと私には売ってくれなかったのである。
固定客に操を立てているのか、手を広げすぎて卸店にばれるのを恐れているのか、ともかく一見さんはお断りだったのだ。その後も買いに行っては断られる日々。
「え、発売日は明日よ〜?」なんてスッとぼけられたこともあったが、それでもあきらめずに毎週毎週しつこく通い続けた。そうしてようやく顔を覚えてもらい、しまいには憐れに思われたのか、とうとう店のばあさんの脳内売ってもいい顧客リストにねじ込むことに成功したのである。
やった、これで一足早く日曜日にジャンプが読めるぞ!
…と思いきや、まだまだ世の中それほど甘くない。
ぼやぼやしていると売り切れるのである。
本屋でもない日陰の雑貨店に入荷されるジャンプは冊数そのものが少なく、顧客の中でも常連度が最下層に位置する我々(つまり週に一度ジャンプしか買いに来ない現金な客)にはほんの数冊しか余り枠が用意されていないのである。
バーゲンのワゴンセールに臨む主婦のように、ラグビーボールに飛びつくラガーマンのように、はたまたくもの糸に群がる亡者のように数少ないジャンプを取り合う少年たち。入荷時間にもかなりのズレがあったため、もちろん買えないこともしばしばあった。
果たしてそこであきらめたか。
否。
そんなときは他にも友人たちから得ていた情報を元に、
別のフライング発売店を巡る旅に出るのである。
時には真夏の炎天下の中を汗を流しながら、真冬には積もった雪に自転車のタイヤを取られながら、ジャンプを求めてひたすら走った。今思うと、あの情熱は一体なんだったのだろう。
ただ人生に暇があったのだといわれれば、そうかもしれない。
しかしながら、買いに走っているときのあのワクワク感は大人になった今では決して味わえないものであったことは間違いないだろう。時折それを懐かしく思い返すだけ。
チーン。
まあまあそんなわけで、当時の私は他の人よりも一足早くジャンプを手にすることができていた。
・フライング販売店の情報を仕入れるためのネットワーク(友情)
・常連になるまで店に通い続ける、
売切れだったら他店にも出向く(努力)
・そしてゲット(勝利)
ジャンプが掲げるこの3つのキーワードを、当時は読者である我々も間違いなく体現していたのだ。
10月13日