山田芳裕の「へうげもの」がひっきりなしで取り沙汰されているみたいですな。現在単行本では3巻まで刊行されているが、まだ1巻しか出ていない尚早とも思われる時期から雑誌に取り上げられたり、その後も新聞で紹介されたり書店でPOP展開されたり。特に雑誌では「今面白い漫画特集」みたいなのがあると必ずといっていいほど名前が挙がっているようだ。 (解説しよう。「度胸星」の悲劇とは、2000年に山田芳裕がヤングサンデー誌上で連載していたSF漫画「度胸星」が何らかの事情(編集部の方針説、アンケート結果説などが存在する)で打ち切られたことを指します。単行本にして全4巻。続いていれば漫画史に残るかもしれない大大大傑作になる可能性を秘めていたので、未だにファンの間からは続編を望む声が強く、もちろん当時のヤンサン編集部に寄せる怨念も強い。)
はてさて、今回取り上げたい「へうげもの」は戦国〜江戸時代にかけて実在した織部焼きの創始者である古田佐介を主人公にした漫画である。信長から秀吉、そして家康へと天下人が移り変わっていく激動の時代の中にあって、武功による立身出世と尽きることない物欲の狭間で揺れ動く佐介の人生を独特のユーモア溢れる視点で描いていく。 ところで山田芳裕はしばしば、自らの欲求に素直な、むしろ俗物とも言われかねないような主人公と、ひたすらストイックに自らを律するライバルとの戦いを描いてきた。「デカスロン」における万吉と嵐、またはダン・オブライエン、「ジャイアント」における巨峰と三島なんかがそれに当たると思う。初期作品「やあ!」の源と加藤もその原型と呼べるかもしれない。そして、結果はというと常に前者が勝利を収めてきた。例えば鳥山明の世界では純粋無垢であることがより強さであり、車田正美の世界では根性のある方がなんだかんだで勝利していたように、山田芳裕の世界では快楽主義(自然体?)であることこそがなによりの強さになるのだ。 そして今回、その構図は佐介と家康にピッタリ当てはまる。当代きっての数奇者で物欲まみれの佐介と質実剛健を旨とする関東の田舎武将である家康。歴史と照らし合わせれば今後二人にどのような結末が訪れるかも明白なわけであるが(知りたい人は自分で調べよう!)、その法則に則れば、せめてこの漫画の中だけは二人の間に歴史とは違った何らかの勝敗があるに違いない。果たして、それは一体? 山田芳裕が創作する歴史の裏を今から楽しみに待ちたいと思う。
10月27日 |