Vol.13 君にずっと捧げるよファンタジー 『エビアンワンダー』

エビアンワンダー エビアンワンダーREACT おがきちか 一迅社
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漫画とファンタジー(剣と魔法の世界)は意外に相性が悪い。
いや、悪いはずないのだが、なぜだかヒットに恵まれない。
例えばこれが家庭用ゲームや映画の場合、ファンタジーを扱った数多くの大ヒット作がすでに世に出ており、もはやそれは定番のジャンルとして根付いている。
それに比べ、漫画には『ドラゴンクエスト』や『ロード・オブ・ザ・リング』のような、シーンを牽引するような大ヒット作が存在せず(『ベルセルク』は大ヒットした後にいきなりファンタジー化したのでここではパス)、そのためかジャンルとしては常に下火という非常に寂しい状態なのだ。

本来、金も人手もそれほどかからない漫画は、創作世界であるファンタジーを描くには格好の表現手段のはずである。
さらにゲームや映画のヒットに見られる通り、日本でもファンタジーを受け入れる土壌が十分にあるのだから、世にある漫画の多さを考えればもっとバシバシとヒットが生まれてもおかしくなさそうなものである。
それなのに、ファンタジー漫画は常に日陰の扱い。
それが私は昔から不思議で仕方なかった。
今までたまたま良作に恵まれなかっただけなのか、それとも他に原因があるのか…。
誰か教えて!(投げた)

しかし、メジャーに目を向けなければ、優秀なファンタジー漫画はちゃんと存在する。
今回紹介する『エビアンワンダー』はヤングキングアワーズライト連載分の2冊、掲載紙移動のため続編扱いになった『エビアンワンダーREACT』の2冊を合わせた全4冊で完結の作品。
悪魔に願いを叶えてもらった代償として、地獄のエネルギーを維持するために悪人の魂を狩って送り続ける宿命を負った「銀符」フレデリカと、その弟で「銀符」の護衛を勤める「侍符」ハウリィのいつ終わるとも知れない返済の旅を描いている。
「銀符」は地獄の糧として良質とされる悪人の魂しか狩らないため、一般人にとってはむしろありがたい存在のはずなのであるが、悪魔と契約した忌むべき存在として軽蔑され、白い目を向けられる。
悪人を倒しても町の人からは恐れられ、落ち着くことも出来ず旅から旅を重ねる、その姿はまるで『妖怪人間ベム』のようだ。

この作者の面白いところは、まるで呼吸をするようにファンタジー世界を扱っているところである。
そして設定をでっち上げるのがものすごく上手い。
「銀符」や「侍符」以外にもこの漫画ならではの様々なお約束事があるのだが、それをさも昔からあった人類の共通認識かのごとく自然に盛り込んでいるところが実に見事なのだ。
しかも世界観の地盤がしっかりしているので、外伝、続編、描こうと思えばいくらでも描けそうなくらいである(ってワシが描くわけじゃないけど)。

作品を楽しむにはある程度のファンタジー知識と漫画読解力が要されるため、決してメジャー向きとはいえない作品ではあるが、ファンタジー好きな漫画読者なら読んでみる価値はあると思う。
そしてこの『エビアンワンダー』が気に入ったら、現在連載中の『Landreaall』も是非オススメしたい。
剣と魔法の世界を描くのではなく、剣と魔法の世界で生きている人々を描いた秀作である。

2月22日