Vol.18 SHALALA…SHALALA…金色のライオン
『聖闘士星矢 EPISODE.G』
聖闘士星矢 EPISODE.G 岡田芽武 秋田書店
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ふむふむの森をご覧の皆さん、「言葉の意味はよく分からんが」にようこそ。
はてさて、皆さんはこのゴールデンウィーク、いかがお過ごしになられたのだろうか?
…。
…。
…ハッ、しまった、全く興味ないことを聞いたもんだから話が続かないや!
さてさて、せっかくのゴールデンィーク明けということで、今回は正にとびきりゴールデンな漫画でも紹介してみようかと。
『聖闘士星矢 EPISODE.G』。
この漫画は、言わずとしれた80年代の少年ジャンプを代表する車田正美の大ヒット作『聖闘士星矢』の外伝的な作品である。
『聖闘士星矢』といえば、当時の私の超お気に入り漫画だった。
今思えば、一般的には『キン肉マン』『北斗の拳』『ドラゴンボール』なんかに比べるとややファン層が狭まる気がするし、後半のグダグダ加減は余りにも酷すぎて記憶にすら残っていないが、それでもサンクチュアリ編くらいまでは夢中で読んでいた。
どれくらい好きだったかというと、間違えて同人誌を購入してしまったほどだ。
とある本屋でそれを見つけ、「あ、僕の知らない『聖闘士星矢』の単行本が出てる〜」と事情も分からずに目を輝かせた無垢な小学生の私は、それを手に取るとすぐさまレジに走った。
家に帰ってページをめくってみると、氷河と瞬がエライことになっていた。
やけに艶っぽい瞬が氷河の上にまたがって「ハッ…ンフッ…ア…ハッ…ひょ、氷河ぁ…」みたいな。
ただ『聖闘士星矢』が好きだっただけの純粋な少年の気持ちを、彼らは一体どうしようというのか。
小宇宙が萎えていくのを感じた。
こうして人は大人の階段を上っていくのか(むしろ踏み外した感あり)。
その他にも氷河×カミュ、一輝×瞬、紫龍×氷河などのバリエーションがあり(星矢は人気ナシ)、絵はもちろん描く人それぞれでタッチがバラバラ、統一感というものが全くと言っていいほど存在せず、これが同人誌というものかと、その存在を認識するに至った。
小学生ながら、同人作家の妄想力に畏敬の念と、その徒労に軽いため息を覚えたものだ。
思いっきり脱線したので話を戻す。
『聖闘士星矢 EPISODE.G』は月刊チャンピオンREDにて原案・車田正美、漫画・岡田芽武という形で今でも連載中の作品である。
『聖闘士星矢』の時代よりも7年程前のサンクチュアリを舞台にしており、主人公は本編でも兄貴分的キャラで割といい味を出していた獅子座のアイオリア。
アテナ抹殺を企てた(実際には救おうとした)逆賊アイオロスの弟として蔑まれて育ったためかすっかりひねくれてしまっているが、不屈の闘志と弱者に対する優しさを併せ持った、いかにも主人公らしい主人公である。
彼を始めとした原作に登場する黄金聖闘士が勢揃いで登場し、それらと大神クロノスの復活を企てるティターン神族との間で繰り広げられる死闘を描いたのがこの『聖闘士星矢 EPISODE.G』である。
この作品の醍醐味は一巻の冒頭、プロローグからいきなり味わえる。
赤子のアテナを殺害しようとする教皇と、それを阻止しようとするアイオロスとの対峙のシーン。
「神が選んだこの少女の運命は死だ 聞き入れよこれは誰にも止められぬ」と、わけのわからぬ妄言を吐きながらアテナに刃を振り下ろす教皇であるが、その次の瞬間!
ページ見開きでアテナを救い出すアイオロスの姿があった。
方ひざを付いてしゃがんだ姿勢の彼は、右腕でアテナをしっかりと抱き、光の線を描きながら華奢な左腕を振り上げている。
その彼と背中合わせの状態で、のけぞり、衝撃で刃と仮面が体から離れてしまった教皇の姿。
背景には砕け散る石床、舞い上がる岩石、コマ枠にそのまま使用した「ドン」という効果音。
そしてアイオロスが余りにもクールに放った「聞けませぬ」の一言。
これら全てが一つの大ゴマの中に収められている。
か、格好いい…!
CGを駆使した余りにも美麗かつド迫力の一枚絵。
こういった豪華な場面がこの先にも敵との戦闘においてバシバシ出てくるのである。
それは車田正美による、何か技の名前を言ってポーズを決めればとりあえず敵が吹っ飛ぶ、という少年漫画における大発明をグラフィック的に最上級にまで昇華したものだといえるのではないだろうか。
この漫画はそれだけである。
いい意味でも悪い意味でも。
他には何もない。
一応のストーリーはあるが、はっきり言ってどうでもいい。
例えば私の場合、誰かが適当に技を決めて何かがどうにかなっている場面を見たいがためだけに、ページをめくっているといっても過言ではない。
本来一番重要なはずの戦闘の駆け引きすら、この漫画においては大して意味がないのだ。
なぜなら原作と一緒で、どんなやり取りがあろうとも最終的には根性(小宇宙)がある方が勝つからだ。
荒木飛呂彦や冨樫義博のおかげで、少年漫画の世界でも戦いに勝利するのにそれなりのロジックが求められるのが当たり前になった。
しかし、この漫画にはそんなものは存在しない。
根性(小宇宙)がより多くある方が、勝つ。
ただそれだけ。
その点でも原作の魂を忠実に受け継いでいると言えるだろう。
原作と異なる点といえば、やはり全てにおいて美麗すぎることだろうか。
岡田芽武の描く人物画は余りにもキラキラしすぎていて、同人女子に入り込む隙を与えない。
原作が持つ汗臭さが全く感じられないのだ。
そして何より、この作品には車田正美の真骨頂というべき男のナルシズムが存在しない。
まあそれは原作というよりも車田正美自信の持ち味だから仕方ないのかもしれないけど。
でも、原作ファンに応えるために(かどうか知らんが)、年齢的なビジュアルの無茶(ほとんどの黄金聖闘士が13〜16歳、魔鈴に至っては9歳、にしては老けすぎ!)を恐れず律儀におなじみの登場人物を配したりするのなら、一度くらい誰か目を閉じてうつむきながら不敵に「フッ」と鼻で笑ってくれてもいいじゃないか。
ダメか?
まあ何はともあれ、絵を目で追っているだけで楽しい作品である。
自分には小宇宙なんてものがないことがよーく分かっている大人の皆さんは、これを読んでも子供の頃のように熱くなるなんてことはないかもしれないが、ゴールデンウィーク以上に黄金色に輝いていた昔を思い返しつつ、パラパラとページをめくってみるのも一興かもしれない。
5月12日