2.

彼が彼女に出逢ったのは、友人に誘われて出かけた、
繁華街からすこしはずれた場所にある小さなライブハウスだった。
充満する煙草の煙と落とされた照明、開演前の大きすぎるBGMに、
身体の小さな彼女の存在はかき消されそうになっていたが
(そして、彼女はあえてそれを望んでいるようにも見えたが)、
薄汚れた壁にもたれかかりながらビールを飲む彼女は、
幻なんかではなく、まさしくそこに存在していた。

その時、なぜ彼女にそんなにまで目を奪われたのか、
彼は小さくリズミカルにカウントする鼓動を心地良く感じながら考えていた。
どうせ友人の付き合いで来たアマチュアバンドのライブで、
欠伸を噛み殺すような退屈な時間を潰すにはぴったりだと、
彼は露骨にそちらを見ないように気をつけながら、彼女を観察した。

まず、顔がものすごくタイプだった。
サーチライトのようにまっすぐ前を見る黒目がちな大きな瞳、
化粧をほとんどしていない滑らかで柔らかそうな肌
(指でそっと押してみたら、どんな風に色が変わるだろう)、
少しだけ上を向いた形のいい鼻筋。
彼が個人的に好きなパーツを全てその小さな顔にバランスよくおさめて、
彼女はじっと前だけを見据えて、その場に存在していた。

そうして、彼女が静かに瞬きをしたのを合図に、
一瞬音が途切れ、最初のバンドの演奏が始まった。