むふむふ   最近お店を移転したと聞いたんですが、
移転の理由はなんですか?
     
ひ び   銀座では今
古いビルを壊して高いビルを建てて
どんどん新しいお店ができるという
大きな流れがあるんです。
     
   
銀座のビルの建築現場。ほかにもいくつかありました。
     
むふむふ   そうだったんですね。
そう言えば銀座の駅から歩いてきましたが
ビルの建設現場をいくつか見ました。
     
ひ び   それでお店のあった古いビルの
解体にともない移転したんです。
     
むふむふ   新しいお店もやっぱり銀座でと?
     
ひ び   ずっと銀座でやってきたので
銀座の一階でやりたいと
思って探しましたね。
     
むふむふ   このあたりでビルの一階の
物件を探すなんて
きっと大変だったでしょうね。
     
ひ び   そうなんです。
しかも、こんなに周りの環境が変わるなかで
原油が高騰してしまって、
それを原材料の一部に使っている
スケッチブックなんかは
言ってみれば配っているような状況だったので
価格の改定をさせていただいたりしたんです。
     
むふむふ   あ、そうだったんですか。
     
ひ び   もちろん
配るっていうわけにもいかないし、
お客様に喜んでもらいながら
こちらも生きていかなくちゃならい。
     
むふむふ   はい。
     
   
     
ひ び   いいものを適正な価格で
提供することって
今はそんなにないと思うんです。
     
むふむふ   そうですよね。
なんでもこんなものがこんなに高いんだ!?
ってよく思うことがあります。
     
ひ び   月光荘の画材は
かなりこだわって作っていますが、
それでもまだ
お求めやすい価格だと思うんです。
     
むふむふ   ありがたいことですよ、ほんと。
でも、提供される側にとっては
その払ったお金で
またさらにいいものを
作り続けていってもらいたい
という気持ちもあるので、
適正な値上がりがあっても
いいと思ってますよ。
     
ひ び   そんなふうに
お客様に理解していただくためにも
こちらから働きかけなくちゃ
いけないんです。
値上げを言う前に
お客様との結びつきが
あってこそだと思います。
     
むふむふ   それは、
今までのお客様との関係の
お話ともつながっていきますね。
     
ひ び   お話したように月光荘には
職人がいますので、
鞄でも筆でも痛んだり
壊れたりしたら
修理させていただいてます。
     
むふむふ   なおしてくれるんですか?
自分のおけいこバッグも
相当使い倒していますが、
それなら安心して
たくさん使えそうだなあ(笑)
     
ひ び   小さい頃から月光荘を使ってくれる方が
今おじいさんやおばあさんになって、
お孫さんが学校の教材で月光荘の画材を
渡されたりすることがあると
「それならこれも使いな」と、
自分が使ってきた画材をあげたりして、
そんなこともあるんですよ。
     
むふむふ   うわ、すごい。
そうやって孫の代まで伝わるなら
「一生もの」という言葉では
収まりきらないなあ。
     
ひ び   ずっと使えるもの、
それでいいんじゃないかなーと思います。
     
むふむふ   しっかりつくられているからこそ
長持ちするんですね。
でも新しく買わない分、
なんだか申し訳ない気持ちにも
なったりして(笑)
     
ひ び   (笑)
でも目先の利益のことだけを
考えているのではなくて その先をいつも
追っていき続けていくことが大事。

ほんとにね、
二段飛び三段跳びで商売は絶対うまくいかない。
一歩ずつでもいいから動いてれば前進していける、
月光荘の親父がそう言っていましたね。

     
むふむふ   なんだかちょっと
救われた気持ちになります、それ。
逆に言うと一歩ずつなら
できそうな気もするんです。
     
ひ び   移転して、
新しいお店の外装から
全部つくっていく
ことになったとき、
自分の持ってる知識に
限界を感じたんですよね。
まだまだ自分は何も知らないんだなあって。
だからいつまでたっても
新しい気持ちで勉強して
いかなくちゃいけないなあ、と思うんです。
     
むふむふ   それは、サイトの運営も同じだなって思います。
知らないこと、わからないことばっかりですもん。
じゃあ、それを維持するためにこころがけている
ことってありますか?
     
ひ び   それは誰にでも言えることなんですが、
すべてのことに関心を持つ、
そして興味をもちつづけることだと思います。
     
むふむふ   では、今もその気持ちをおもちなんですね?
     
ひ び   その気持ちがしぼんだ時点でもう
終わりなんじゃないかと思います。
     
むふむふ   日比さんのそのパワーには参りました。
お話を聞いていると頑張らないと!
って思いますよ。
     
ひ び   でも、新しくてもお客様の考えと
乖離していっちゃだめなので
いつもいつもお客様と一緒に一歩ずつ
進んでいくってことですよね。

お客様の心を読めなかったら、
絶対喜んでもらえるわけが
ないじゃないですか。

     
むふむふ   はい。
     
ひ び   ただ一歩一歩でいい。
銀座でも外資の
ピカピカのブランドが来て
オープンの頃から完璧に
お店を作られていますが、
私は一歩一歩みなさまに
便利につかってもらえるように
やっていけばいいかなあと思っています。
     
むふむふ   最初から完璧にできなくても
新しい気持ちできちんと進んでいくことが
大切なんですね。
     
   
     
ひ び   移転後に昔からのお客様が来られて
『月光荘の親父が「よう来たな」って
肩を抱きにきてくれるような雰囲気の
店づくりになってるね』と言ってくれたんですね。

それは最高の褒め言葉だなあって思って
ほんとうに嬉しかったです(笑)

     
     
    第10回につづく
【これまでのインタビュー】
2007年2月6日 第1回 宣伝と広告はしない
2007年2月7日 第2回 生活のなかに色を
2007年2月8日 第3回 月光荘のスケッチブック
2007年2月9日 第4回 子供にほんものを
2007年2月13日 第5回 一期一会
2007年2月14日 第6回 お客様と月光荘
2007年2月15日 第7回 人を大切に
2007年2月16日 第8回 銀座一安いギャラリー
2007年2月19日 第9回 変化のなかで