伊藤尚美(いとうなおみ)

水彩画家、テキスタイルデザイナー。1971年生まれ。94年より作品をパリ、大阪、東京にて発表しはじめる。自身の作品がCMや広告に起用され、版画などが国内外で発表されている。2001年より「nani IRO」というブランド名でテキスタイル画を描きプロデュースする。

聞き手:ふむふむの森 
ふむふむ 伊藤さんの絵を観ていて僕が素人目なんですけど、
感じるのは、はじめに浮かんだインスピレーションと
最後の完成形の作品との間に作為性がないように感じる、
というか、ストレートに感じるんですよ。
それが気持ちいいんです。
   
いとう 絵を描いているときはそんな感じなんですよ。
ただ、デザインするとなると、
その間に慎重にいろんなことを考えるんです。
   
ふむふむ あ、そうなんですね。
   
いとう こういう人に届けたいな、と考えると、
手にとってもらった時に、
この柄はこの大きさのほうがいいかな、とか、
そういう葛藤をしてますね。
自分の思うようにストレートに全部できれば
苦しくないと思うんですけど、
手に取る方々がどうしてほしいか、っていうのが
ひしひしと伝わってくるんです。
それと自分の感覚との折り合いをどこでつけるのか、
ということをものすごく考えるんですよね。
   
ふむふむ なるほどなあ。
   
いとう それが作品としてだけでなく、
商品になるものも自分の名前が
くっついていくので、そのあたりが
一番葛藤の時間ですね。
それをずっとアトリエでやってるんです。
   
ふむふむ そっか、布をつくるときも葛藤の連続ですね。
   
いとう そう。
今回の展示は2つの部屋をつくってもらえたんです。
1つは完全に私の世界でやっていいよ、と言われて、
それはすごくうれしかったです。
7年目にしてはじめてやらせてもらえるんです。
   
ふむふむ わ、よかったですねー。
   
いとう そう。
今まではショップの部分だけだったので、
葛藤しながらなので、ちょっと我慢してた部分も
あったんですよ。
でも今回は自由にできる部分ができて
うれしいですね。
   
ふむふむ なるほどー。
その2つでバランスがとれるようになりますもんね。
   
いとう うん、そうなんです。
でも、その分時間がかかるので、
今回は半年くらいずっと考えましたね。
   
ふむふむ その考える、というのは、描きながら考えるんですか?
   
いとう そうです。描きながらですね。
   
ふむふむ 半年も葛藤してるんだ。
   
いとう 一時期、手づくり作家、って言われたことがあって。
   
ふむふむ 手づくり作家??
   
いとう 布をつかって、何かを提案する人、として、
それだけの仕事が来たこともあったんですよ。
私は楽しくはやっているんですけど、
私の中では布をつかって何かをつくるというのは、
絵を描くということの周りに付随することだから、
ちょっと違う感じがしたんです。
だからこそ絵を描く仕事に対しては
しっかり考えたいんですよね。
   
ふむふむ そういう伊藤さんの葛藤は苦しくもあり、
でも、やっぱり楽しいから続けている感じですか?
   
いとう そうですね。
それも何日も夜に考えました(笑)
   
ふむふむ けっこう考えるタイプなんですねー(笑)
   
いとう 昔はこんなんじゃなかったんですけどね。
関わっている人が広くなってきたのもあって、
ちゃんと視点を定めないと周りまで
グラグラしてしまうから。
   
ふむふむ なるほどね。
   
いとう 贈り物を届ける、っていう感覚があるんです。
自分の作品を観てもらうっていうだけじゃなくって、
いろんな形にして贈り物を届けられるので、
いろんな人に想いを込めて届けたいですね。
   
ふむふむ いいですね。
   
いとう そういう意味で布はぴったりなんですよ。
服にまでして届けてしまうよりも、
布という形で届けて、
その後に手に取った人のアイデアだったり、
生活だったりで形が変わっていくのが
おもしろいな、って思うんです。
   
ふむふむ あー!そっか。
   
いとう だからそういうことが、
仕事というよりも、楽しい、と思えるから
続けられるんだと思いますね。
     
    #08『気分を上げるには』へつづく
     
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展覧会のお知らせ
2008春 nani IRO
「衣 まとうころも」

新作のテキスタイル8柄38色と共に肌にまとうものを創作していくつつましやかで豊かな日々の営みを提案します。
●日時:2008.03.19〜23
●場所:LimArt、LimArt annex(東京、恵比寿)
※伊藤尚美さん来場日: 3/20 14時〜17時
 (at LimArt annex)

くわしくはこちらで!

  伊藤尚美さんの本が出版されます。
絵と色の布でつくる
―nani IROの服の本 大人服と子供服

水彩画家・伊藤尚美が手がけるテキスタイルブランド「nani IRO」で作る大人服と子供服を紹介。大人のポンチョ風スモック、子供のフリルつきフレアワンピースなど、柄づかいの美しい作品が満載。 実物大パターンつき。
2008年3月8日発売。
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