聞き手:ウチタカヒデ 
ウ チ 片寄さんの音楽的ルーツの一つに
ソフトロックを挙げられていますが、
その魅力とは一体なんでしょうか?
   
片 寄 ソフトロック・ブームが起きたのは
90年代の初頭くらいですか。
その頃って、僕はそんなにその世界に
填っていた訳ではないんですよね。
好きだったのはゾンビーズとか、
アメリカの方ではサークルが一番好きだったかな。
ミレニウムとかロジャー・ニコルズとかは、
当時の自分の耳にはちょっと古臭い音楽だな、と
思っていましたね。
   
ウ チ なんでもミレニウムの『BEGIN』は、
高桑さんと白根さんに進められて聴き直したとか。
   
片 寄 そうです。
あの二人は元々ガレージGSシーンから
出てきているから、その頃から聴いていましたね。
恐らく全曲完コピ出来るんじゃないか
と思うほど聴き込んでいたんですけど、
当時僕はあんまりピンとこなかったんですね。
   
ウ チ なるほど、意外ですね。
   
片 寄 自分の中では、
アレンジングやコーラスのハーモニーの面白さ、とか
構築的なことに興味が向いてきた頃から、
その素晴らしさがようやく分かるようになりましたね。
今では勿論ミレニウムは大好きだし、
サウンドの革新さも凄く分かります。
   
ウ チ カート・ベッチャーの
コーラス・アレンジのセンスとかですか。
   
片 寄 そうですね。
それと『BEGIN』はあの音質が衝撃的で、
そのサウンドはいまだに新鮮さを失っていないですよね。
   
ウ チ その他に、やはり
ロジャー・ニコルズ&ポール・ウィリアムスにも
影響を受けていますか?
   
片 寄 彼等に関しては
ソングライティングの素晴らしさですよね。
例えばキャッチーなものって一歩間違えれば、
安っぽさに繋がると思うんですけど、
彼等やバカラック(バート・バカラック)とか、
志が高い人が作る曲って、僕にとっては
ある種クラシックを聴いているのと同じくらい、
高尚なものなんですよね。
崇高な雰囲気が凄くあって、
上品さともいえるかも知れないけど、
使い捨てじゃない音楽なんですよね。
   
ウ チ 下手に消費されないってことですね?
   
片 寄 そうですね。
一方でポップスの下品さも好きなんだけど、
彼等から学んだのは、ポップスの上品さだよね、
僕にとっては。
   
ウ チ 片寄さん的に、
その上品さの肝となるところはなんでしょうか?
   
片 寄 う〜ん、言葉では表現しづらいんだけど、
例えばバカラックもロジャー・ニコルズも
転調が凄いじゃないですか。
ちょっと奇抜で普通じゃ考えられない
転調をするんですけど、
恐らくその転調もコードありきではなくて、
メロディとして生まれてきている、
その強さを凄く感じるんですよね。
特にバカラックは鼻歌で曲を作っているんじゃないか
と思うくらいなんですよ(笑)。
   
ウ チ 確かにあまり転調を意識させない曲作りですよね(笑)。
   
片 寄 でも実際演奏してみたら、
もの凄いコード・プロダクションに
なっているんですよね。
そこが上品さの肝になっているんじゃないかな。
やはり、この転調で驚かしてやろうとか、
そういう作為を感じさせないんだよね。
だからこそ長く聴けて飽きさせない、
感動させられるってことじゃないのでしょうか。
   
ウ チ 丁度、ロジャー・ニコルズ&
ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの
40年振りのニューアルバム『Full Circle』
リリースされましたが、お聴きになってどうでしたか?
   
片 寄 凄く楽しませて頂きました。
一番感じたのは、声の強さと曲の強さだよね。
その部分に絞って言えば、文句なしだと思いましたね。
   
ウ チ あまり声質とかの衰えを感じさせなかったですよね?
   
片 寄 全然感じないし、
基本的なアレンジの方向は
ほぼファーストの再現に近いというか、
同じ方法論でやっている訳でしょう。
だからファーストを好きだった人も
きっと裏切らないと思いますね。
   
ウ チ お好きだと言われている、
「ザ・ドリフター」の再演版はいかがでしたか?
   
片 寄 オリジナルを超えているとは思わないんだけど、
でも今ロジャー・ニコルズが出すんだったら、
と考えた時には、
40年経ってよくここまで作ったなって感じですね。
なにより声の不変さとハーモニーの素晴らしさ、
3人の声が混ざった時のマジカルな感じが
全然残っているから、
そこだけでグッときちゃったところはありましたね。
   
ウ チ 新曲はいかがだったでしょうか?
なにより作風が変わっていないんですけど(笑)。
   
片 寄 両方とも良い曲だとおもいましたし、
ピュアなんだけど聞き流せない何かがある
ってところは変わらなかったね。
個人的には正直、毒がないと
引っ掛からないタイプなんですけど、
ソフトロックに関しては毒がないものが
沢山あるからね(笑)。
だけど、ロジャー・ニコルズやバカラックの
ソングライティングって、
そういうものを超えたところにあって、
それを聴いていると、
赤ん坊の笑顔や献身的な動物を見た時の
気持ちに近いんだよね(笑)。
   
ウ チ 心が洗われるという感じですね(笑)。
   
片 寄 そうそう。
それを考えると、今回の新譜にしても、
音質とかそんな細かいことを気にしている俺は
なんだろう、って(笑)。
     
    Interview.04へつづく
     
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