聞き手:ふむふむの森 
ふむふむ じゃあ、曲をつくる時は、
メモもないし、日常で浮かんだメロディもない。
どうやってつくるんですか?
   
山 崎 すごく前に荒井良二さんとお話をしたときに、
“絵本はまず、結末から考える”という、
話をしていたんですよ。
それは、私もそう思うんですよ。
いたるところに“線”をひいていくんですよ。
   
ふむふむ 線ですか。
   
山 崎 その線の中でどうやって自由に遊べるか、
って考えるんです。
話を頭から考えていくと、
どんな方向にでも進んでいけるんです。
でも、後ろを決めちゃえば、
ここにたどり着かなくちゃいけないですよね?
ひとつの自由は制限されるけど、
すごく盛り上がれる。
   
窪 田 ブレない。
   
山 崎 うん。
だから最後の場面から考えていくんです。
男の人がちょっと見晴らしのいい
二階建ての喫茶店の窓辺で、
プカーっと煙草を吸ってる、
それをラストにしよう、って思って、
できたのが、
アルバム『あざやか』に収録されてる
『雨音が聞こえる』という曲なんです。
   
ふむふむ そうだったんだ。
   
山 崎 頭に記憶してる場面の中からヒントを得て、
人を置き換えてるんです。
   
ふむふむ ラストシーンの設定だけじゃなくって、
そこに至る過程も日常の記憶の中から?
   
山 崎 うん。
例えばすごくきれいな花火が心に残ってたら、
その場面に似合う男女はどんな感じかなあ、とか、
その花火をどういう想いで、
観ているのが一番いいかなあ、とか、
そういうことを想像していくんです。
   
ふむふむ じゃあ山崎さんが見た景色っていうのは
絶対的な存在ですよね。
   
山 崎 そうなんだけど、
自分が見てるものよりも、
もっと上から見てる絵もあるんですよ。
実際に自分が見た景色だけど、
思い出すときは違う角度からの景色に
なっていたりするんですよ。
不思議なんですけど。
   
戸 川 それはなんとなくわかるなあ。
そういう視点を感じるもんね。
   
山 崎 空中からみんなが話しているのを
見ている絵とか、
写真に残しちゃうと、
それしかないじゃないですか?
それ以外の空気がない、っていうか。
   
ふむふむ 視点がひとつになっちゃいますよね。
   
戸 川 歌詞の中の物語も登場人物の視点っていうよりは、
俯瞰の視点っていうか、そういう感じが強いもんね。
   
山 崎 うんうん。
   
ふむふむ 山崎さんは記録に残さない、ということなんですけど、
忘れてしまいたくないなあ、という出来事も
記録に残しておかないんですか?
写真を撮ったり。
   
山 崎 写真に撮ることもあります。
みんなががんばって録音してる風景とか。
だけど、そういうのとは違って、
単純に「ああ、これがきれいだな」って思って
撮ることはないですね。
   
ふむふむ 忘備録として残さないってことですね。
   
山 崎 忘れたら、それまでです(笑)
   
ふむふむ 確かに、情報が多い世の中なので、
溜まっていく一方ですもんねー。
   
山 崎 でもね、スケジュールはすごくメモするんですよ。
   
ふむふむ そうなんだ。
   
山 崎 明日やらなきゃいけないこととか、
明後日やらなきゃいけないことまでメモるんです。
だけど、想像していることや、イメージは
メモにとらずに残しておくんです。
     
   

no.10『隙間がある』につづく

     
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